【翻訳】True Blue――『忠実なる青』
2015年2月10日 MTG翻訳:色の哲学 ここに訳出した記事、『True Blue』は、既にタイ屋さんによって翻訳されています。http://web.archive.org/web/20070630051352/members.at.infoseek.co.jp/braingeyser/04/0412.html
原文、タイ屋さんの翻訳、ともに発表から長い年月が経っていますし、またカラーパイに関する文献も増えましたので、新たに訳出するのも了承していただけるだろうと期待する次第です。
原文、タイ屋さんの翻訳、ともに発表から長い年月が経っていますし、またカラーパイに関する文献も増えましたので、新たに訳出するのも了承していただけるだろうと期待する次第です。
≪忠実なる青――頭でっかちのモヤシ人間≫
原題:True Blue ―― All brains, no brawn
Mark Rosewater
2003年8月11日
http://archive.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr84
【形容詞として「true blue」は「忠実」を意味する】
青の週間へようこそ! これはマジックの五つの色に専心する一連のテーマ週間の三番目のものだ。我々は既に、緑と白に関しての週間は設けた。各週を通じて私はコラムで、これまでの『緑でいるのは楽じゃない』と『白光満ちる大通り』のことだが、その週の色のフレーバーと哲学を説明してきた。今回私は青魔法の世界を考察していこう。
●パイの取り分は常にあるものだ
カラーホイール上での作業を通じて、我々はマジックの五つの色それぞれに関して以下の問いを設定した。
・その色の関心事は何か? その色にとっての最終目標は何か?
・その目標に到達するために、その色はどんな手段を用いるか?
・その色の関心事は何か? その色が表象するものは何か?
・その色が軽蔑するものは何か? その色を否定的な方向に駆り立てるのは何か?
・その色が友好色を好み対抗色を嫌うのはなぜか?
・その色の最高の長所と最大の欠点は何か?
●その色の関心事は何か? その色にとっての最終目標は何か?
各色の哲学は、その色の世界の見方に由来する。青が注視し見出すのは、機会だ。青にとって世界は資源の集まりであり、個人はそれを用いることで、自分が望むあらゆるものに変容することができる。各人は無地の粘板岩として生まれる。人生の目的とは、自分が何になりたいか、そしてそこに到達するためにはどうするか、それらを学ぶことだ。
これを完遂するために、青の魔道士は世界で最も重要な資源に価値を見出すようになる。すなわち情報という資源に、だ。世界における自分の居場所を見つけ出すために、魔法使いは可能な限り多くの知識を集めなければならない。情報という手段を自在に使いこなすことができれば、彼はありとあらゆる問題に対する回答を探し当てることだろう。こういった事情から、青の究極の目標は全知だということになる。青が望むのはあらゆる物事を知ることだ。なぜなら全てを知る者は弱点を持たないのだから。
こういった知識への渇望はメカニクスとしては、ドローカードやライブラリー操作といった青の能力において見出されるだろう。束縛を被った際には、青は新たな回答を見つけ出そうとする。他のどの魔道士と比べても、青こそが、魔術の決闘が情報戦だということを深く理解している。最も多く呪文を知る魔法使いは、大いに戦術上の優位を築くことができる。
●その目標に到達するために、その色はどんな手段を用いるか?
知識を得るという目的のために、青は知性の重要性を尊重するようになった。青は対戦相手の一枚上手を読み切ることで戦闘に勝利する。魔術の決闘においてこれが意味するのは、魔法がどのように作用するかを理解するということだ。そしてこれが所以で、青は《対抗呪文 / Counterspell》【青のインスタント。呪文一つを打ち消す】や《送還 / Unsummon》【青のインスタント。クリーチャー一体を手札に戻す】を会得しているのだ。青は魔法の技術に熟練しているので、刹那の瞬間に呪文を停止させたり反射させたりすることさえも可能だ。これがまた理由となって、青は《臨機応変 / Sleight of Mind》【青のインスタント。呪文やパーマネントの文章に書かれた色を別のものに置換する】や《魔法改竄 / Magical Hack》【青のインスタント。呪文やパーマネントの文章に書かれた基本土地タイプを別のものに置換する】といったような、呪文がどう作用するかを実際に書き換えてしまう呪文を有しているのだ。
また、青は知性を用いて対戦相手を欺く。混乱に乗じて勝ちをかっさらうことに対して、青は良心の咎めを全く感じない。青は《Illusions of Grandeur》【威厳の幻覚。青のエンチャント。戦場に出たとき20点ライフを得て、戦場から離れたとき20点ライフを失う。累加アップキープを持つ】のような幻覚や、《方向転換 / Divert》【青のインスタント。呪文の対象を変更させる】のような対戦相手の有する魔法を想定外な挙動で機能させる呪文、これらを利用する。同様に青は《説得 / Persuasion》【青のオーラ。そのクリーチャーをコントロールする】のような窃盗と《不可視 / Invisibility》【青のオーラ。壁以外にはブロックされなくなる】のような変装を効果的に利用する。青は自分が肉弾戦では勝ち目がないと力量を弁えているので、自分の能力を使って決闘を青のフレーバーへと傾けるのである。青は最も公正な色というわけではなく、また規則が許すならば、躊躇することなくその体系を食いつぶすのだ。
加えて青は次のことを積極的に擁護し肯定している。つまり自分の必需品を創り出すために、最初から組み立てるか、あるいは元々の設計に変更を加えるか、【そのどちらでもありうる】ということだ。したがって青は最も頻繁にテクノロジーを使う色であり、《修繕 / Tinker》【青のソーサリー。ライブラリーから直接アーティファクトを出せる。あらゆる構築環境を席巻した凶悪な呪文】のようにアーティファクトと最も強い相乗効果を持っているということだ。
●その色の関心事は何か? その色が表象するものは何か?
青の一部分は学生であり、また別の一部分は科学者だ。青が現在進行形で行なっている探求は、可能な限り多くの知識を集積させること、そしてその知識を応用する手立てを見つけ出すことだ。絶え間なく自身を改良することで自分の潜在能力を最大限に発揮させる、青はそのように望んでいる。これはつまり、青が表象するのは情報を集めて利用するという性質だ、ということを意味している。
知識。創造性。巧みさ。人造。知性。計略。狡猾。受動性。精神、思考。操作。幻覚。冷淡さ。碩学。制御。建築。四元素の水と風。
●その色が軽蔑するものは何か? その色を否定的な方向に駆り立てるのは何か?
青は自身の知性によって生きている。したがってそのように生きることができない者や、もっと悪ければ、物事を熟考する時間を取ろうとさえしない者、青はこういった者たちに対して虫唾が走る思いを抱く。青は緩やかで、規律正しい、受動的な色だ。今後の行動を考え抜くために充分見合った時間を設けることなく実行に移ってしまうような存在は、青のまさに核心を揺るがしている。
青がそのような生意気な行為に偶然にも居合わせたならば、良き親ならば誰もがするようなことを行なうだろう。すなわち彼らの企みとは、厄介事を引き起こすクリーチャーに対して、彼らの制御下に置かれたことを大々的に主張することで、そうすべきだと彼らが考えるような振る舞いをさせようとする、というものだ。
●その色が友好色を好み対抗色を嫌うのはなぜか?
白に対して青は、思考と計画の重要性を理解する色だと評価を与える。白は自制心を持っているため、一歩退いて距離を取ったり、自分の行動の成り行きを熟慮したりできる。
黒に対して青は、真実が時に見せる醜さから手を引いたりしない色だと評価を与える。黒は無知や自己欺瞞を装って自らを曖昧にしたりはしない。黒は弁解をしない、むしろ解答を探し求める。
緑に対して青は、過去に規定された色だと評価を与える。緑は古来からの慣習に従っているので、新奇であったり革新的であったりするようなものなら何でも遠ざけようとする。加えて緑は、非合理的な本能を取るために、合理的な知性を拒絶している。緑とは時代遅れの哲学であり、変化という不可欠な進歩を停滞させるものにしか過ぎない。もし青が自分の大義を押し進めるつもりならば、緑は除去されなければならない。
赤に対して青は、知性に向かって公然と唾棄する色だと評価を与える。赤は多元宇宙で最も混沌とした力【force】である感情に導かれている。赤は説得を受け付けないし、その破壊的な天性は目を光らせて、青が建立しようと願うものを片っ端から壊そうとしている。もし赤が野放しにされたままならば、それは青にとっては将来の頭痛の種にしかならないだろう。したがって赤は狂気に駆られる前に消去される必要がある。
●その色の最高の長所と最大の欠点は何か?
青の最高の長所は対戦相手の上手を行く思考力だ。無限の情報を取り扱う青は、回答をすべて手中に収めている。問題なのはこのやり方は非常に遅いということ、そして青は行動を起こすべき時においても受動的である傾向にあるということ、だ。青が状況を見極める前に、素早い対戦相手はしばしば青を打ち負かすことが可能だ。
●青い曲者たち【Blue Meanies:ザ・ビートルズのアニメ映画「イエロー・サブマリン」に登場する音楽嫌いの青鬼たち】
各色の哲学について、研究デザイン部が色のフレーバーに肉付けする際に活用した登場人物、私はその登場人物の実例をいくつか挙げてきた。我々は部屋の壁に巨大なカラーホイールを設け、絵や写真を任意の色にピンで留めるという作業を行なっていた。私の色の哲学のコラムにおいてはこの項目が最も物議を醸すものだと、これまでで明らかにされてきたので、天の主は私がここで筆を置くことを決してお許しにならないだろう。以下に挙げるのは我々が青の登場人物だとみなしたものだ。
マーリン【Merlin:伝説上の魔法使い。奥義を伝授した愛弟子に裏切られ、幽閉された】――塔に閉じ込められた孤高で聡明な魔法使い、彼はその典型の起源となった者だ。彼こそ青の権化だと言えよう。
スポック【Spock:「スタートレック」シリーズの登場人物。艦隊の技術主任】――鉄化面で、論理的で、「新たな世界と文明を探し求める」という任務に没頭する、そんなスポックが「スタートレック」の全登場人物の中で最も青だ。
ウィローとジャイルズ【ともに「バフィー」の登場人物。Willowはコンピュータが得意で、Gilesは図書館司書】――特に私が言及したいのは初期のウィローとジャイルズについてだ。闇堕ちしたウィローはいささか黒いと認めなければならないからだ。サニーデールの町で事件が発生したとき、この二人は本を広げて「大いなる災厄【the big bad】」の倒し方を調べ上げたのだった。勝利とは、彼らが証明したように、知識によってもたらされるのだ。
ミスター・ファンタスティック【Mr.Fantastic:本名リード・リチャーズ。マーベル・コミック社の「ファンタスティック・フォー(The Fantasitic Four)」というアメコミの登場人物。自身の体を自在に変形できる】――「ファンタスティック・フォー」のチームを牽引する彼は、心の奥底からして科学者だ。知っての通り彼は、暴虐な覆面の狂人や惑星食らいの天体生物と戦うのだが、しかし心の中では、むしろ宇宙の真理をただひたすら探究したいと考えているようだ。リード・リチャーズは、マーベル社作品のどの登場人物よりも、知識の渇望によって強く導かれている。
リサ・シンプソン【Lisa Simpson:「ザ・シンプトンズ」の登場人物】――リサは自分自身を知性によって定義する。彼女にとっては非常に重要なことは、彼女が他の誰よりも物知りだという事実だ。そして、各色の記事でシンプトン一家から一人ずつ表象させること、これがまた重要なのだ。
●何か一つ青い物【Something Blue:バフィーの映画版のサブタイトル。一般的には、結婚式で花嫁が身につけると幸せになれる四つの道具の一つ。ちなみに残りの三つは古い物、借りた物、新しい物】
これで我々は色の哲学の折り返し地点に到達したことになる。今後数ヶ月の内に残りの二色を、黒と赤を探求すると約束しておこう。
来週も参加していただければ、もう少しパイを並べるつもりだ。
その時まで君たちの問題が、行動を起こす前に考えることで解決されるのを願いつつ。
――マーク・ローズウォーター
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