ファイルを整理していたら見つかったので、手直しして再掲。
原文発表は11年7月で、マジック2012発売の月に当たります。「新たなるファイレクシア」の発売は11年5月でしたので、スタンダードはZEN・SOMの末期環境ということになります。
原文発表は11年7月で、マジック2012発売の月に当たります。「新たなるファイレクシア」の発売は11年5月でしたので、スタンダードはZEN・SOMの末期環境ということになります。
≪戦闘時におけるハッタリの基礎知識≫
原題:Combat Bluffing Fundamentals
Steve Sadin
2011年7月26日
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/li/153
君の残ライフは4。戦場には君が召喚したばかりの≪炎破のドラゴン≫【この記事では「5/5飛行のドラゴン」として理解していただければ充分である】と、幾つかのタップ状態の土地がある。手札には役立ちそうなものはない。対戦相手は残ライフが20で、戦場には1体の≪ルーン爪の熊≫【2/2バニラ!】、3枚の≪山≫、3枚の≪森≫があり、そして手札は2枚だ。その状態で相手は≪熊≫で攻撃してきた。
さて、君。どうする?
ブロックする。
誰もが、唯一に、即座に引き出すべき答えだ。
なぜか? 理由はこうだ――仮に対戦相手が、ブロックしてくる≪ドラゴン≫を殺せるカードを持っているなら【例えば3点火力の≪火葬≫や4/4修正の≪剛力化≫】、それらのカードは≪ドラゴン≫がブロックしなかった場合であっても、そのまま君を殺せる手段になるからだ。そうであるからには、≪ドラゴン≫を失ってでも別のカードを引くために生き延びる方が、今すぐブチ殺されるより遥かにマシだろう。それに加えて、対戦相手が「ハッタリ」が上手くいくことを願ってる可能性だって無きにしも非ずだ――もし君が≪熊≫の攻撃を受ければ、手札に≪ショック≫【2点火力】があればそれで止めを刺せるし、あるいはこれから数ターンの内に引く≪火葬≫で君を葬り去る算段もつけられる、といった具合に。
以上から明白なことに、対戦相手はこの状況で君を出し抜くことはできない。では君は一体どういった場面で「巧妙なハッタリの攻撃」の犠牲になったり、あるいはそれを上手く相手に咬ませたりできるのだろうか?
●失う物は何もない
君がハッタリを成功させるような状況は一つしかない。すなわち、対戦相手がハッタリだと悟る程の余裕を持っていない、という状況だ。
自分の身を守るための手段が限られている状況で、しかし身に降りかかる脅威すべてに即座に対処しなくてはいけない場合、ハッタリは避けることのできないものとなる。
もし対戦相手が残ライフ2で、君が≪熊≫をアンタップ状態の≪ドラゴン≫に向けて突撃させたならば、対戦相手は≪ドラゴン≫で≪熊≫をブロックするだろう。確かに、君は≪剛力化≫を使って≪ドラゴン≫を討ち取りつつ≪熊≫を生き残らせ、この武勇伝を語り継ぐかもしれない。だが対戦相手は、自分の即死を免れるためには何を失ってでもブロックする必要がある。たとえ君の手の内に実際には何もなかったとしてもだ。
もし君が赤緑デッキを使っていて、対戦相手の残ライフは4、そして君が≪熊≫で≪ドラゴン≫へと攻撃したならば、対戦相手は反射的にそれをブロックするべきだろう。なぜなら≪ドラゴン≫を打ち負かすようなカードは、同じように直ちに君をゲームに勝たせてくれるだろうからだ。
もし対戦相手が残ライフ5で、君が赤緑デッキを使っているならば、君は≪熊≫で攻撃することもできる――手札に何もなかったとしても、君のハッタリは少なくとも「機能する」だろうからだ――いささか鵜呑みにし辛いことではあるが。【つまり次のような葛藤を対戦相手に突きつけられる。】もしかしたら君は≪チャンドラの憤慨≫【クリーチャーに4点、コントローラーに2点与える火力】を持っているかもしれず、対戦相手は≪ドラゴン≫でブロックしたら、それを失うかもしれない。だがブロックしなかったとしても、対戦相手が≪チャンドラの憤慨≫ですぐさま殺されるということもない。【こういった葛藤だ。】
もし対戦相手が残ライフ7ならば、君はたとえ手札に役立つカードを持ってなくても、気楽に≪熊≫を≪ドラゴン≫へと差し向けることができる。ともすれば対戦相手は≪ドラゴン≫が≪火葬≫や≪剛力化≫や≪チャンドラの憤慨≫で始末されるのを恐れるかもしれない――君はただダメージを一発通しておくことで、次のターンに引く≪溶岩の斧≫【対プレイヤー専用の5点火力】を致命的なものにしようとしているだけだとしても、だ。
君のプレイングが対戦相手に複数の選択肢を与えるという場合、どの選択肢にもそれ相応の結果が用意されている必要がある。でなければ、対戦相手は普通は、唯一正しい選択肢を選ぶはずだからだ。
対戦相手を即座にこういった状況に陥れることで君は、最終的にとても重要な意味で裏目に出うるような苦汁の決断を迫れる、というわけだ。
もし対戦相手がブロックして君が≪剛力化≫を使えば、対戦相手はきっととても苦い表情をするだろう。でももし対戦相手がブロックせず君が≪溶岩の斧≫を使えば、ゲームは即座に終了だ。
●ブロックさせないのに、なぜアタックさせないんだ?
多くのプレイヤーが、完璧なハッタリである攻撃を仕掛けようと少なくとも考えてはいる。だがその一方で彼らは、以下のような状況を意識して考えていない。すなわち、ブロックする気は実際にはないのに、あたかもあるかのようにハッタリを掛けられる状況、それはどんなものなのかということを。
君は≪エイヴンの瞬翼≫【飛行、呪禁、2/2】を、相手は≪大いなるバジリスク≫【接死、3/5】を所持しているとしよう。君の総ライフは健康と言うに足るので、チャンプブロックする必要はないことくらい分かっている――まぁ、相手のそれまでの一連のプレイングが実に華々しかったなら、話は変わってくるだろうが――ともあれ、ブロックはしないと決めている。それなら、どうする? 攻撃するのが、当然だ!
もし君の手の内に≪剛力化≫があったとしても、君はその2対1の交換に乗り気にはなれないだろう。だからもし君が≪瞬翼≫を攻撃させずに引き止めたとしても、それによって相手が攻撃するのを躊躇うことはまずない、と言っていいはずだ。
もし君が、手札に≪剛力化≫あるいは≪火葬≫を抱えていたとしよう。そして君は徐々に減りつつあるライフを守るために、相手の≪バジリスク≫を2枚のカードで仕留めなくてはいけない――そんな気分になったとしよう。君は【手札のカードを使って】それを実行に移せる。だがもし君が、≪瞬翼≫が≪バジリスク≫を仕留めるために必要な第二の補助呪文を持っていない、なおかつチャンプブロックさせるつもりが元々ない、このような状況にあるとしよう。君は≪瞬翼≫を攻撃に出した方がいい。というのも、≪瞬翼≫が起きてようと寝てようと、対戦相手は≪バジリスク≫で殴ってくるはずだからだ。
プレイヤーは滅多に「ありえそうなブロック」――実際には決して行われないブロック――というハッタリをかけようと決断することはない。だがその一方で私は、非常に多くのプレイヤーがブロックさせる意志がないのにクリーチャーたちを留めておく、そういった局面を見てきた。本来ならそのクリーチャーたちは、相手のライフを何点かくすねることができたのにも関わらず、だ。
なぜ攻撃しなかったのかと訊かれた時、プレイヤーたちはしばしばこんな風に回答してくる――「それはさして重要な事柄じゃなかった」と。確かに、そういった追加の何点かのダメージがあったからと言って、君がそのゲームに勝てたかと問われれば、答えは否かもしれない。だが、ブライアン・キブラーや中村修平が、自分の思うようにゲームが進まない時はいつでもただ唸っていただけだと、君はそう考えるだろうか? 違う。彼らはどんな点数のダメージについても闘志を顕わにして真剣に向き合う。そしてその血の気の多いプレイングが往々にして、他のどこでもない彼らの元に勝利を導いているはずだ。
しない理由がない時にきちんと攻撃することで、君は対戦相手に追加の圧力を掛けられるだけでなく、いざ君がハッタリのブロックを仕掛けた際に、それを遥かに本当っぽく見せることができるのだ。
ゲームもそれなりに後半になってきたとしよう。君の残ライフは9なのに対して、相手は15で生き生きしてる。君は≪瞬翼≫を、相手は≪バジリスク≫を持ってる。さて、君は攻撃するだろうか?
もし君がそのターンの間に非クリーチャー呪文の為にタップアウトするつもりなら、かつ≪瞬翼≫をチャンプブロックに使う気がないなら、間違いなく≪瞬翼≫を攻撃に出すだろう。だがもし君が緑を含む2マナを残しておけるなら、≪瞬翼≫を立たせておきたいと思うかもしれない。そうすれば≪剛力化≫を備えたブロッカーを【事実であろうとハッタリであろうと】構えることができるからだ。
●準ハッタリ
君が手札に抱えるカードの中には、対戦相手が君のハッタリを悟ることによって初めて、戦闘を有利に進めるものとなる、そういった状況が時にはあるかもしれない。だが君が究極的に望むのは、やはり――君が目の前の状況に対して理想的なカードを抱えていると、対戦相手に思い込ませること、あるいは、対戦相手に実際にそう思い込ませられなかったとしても、思い込んだ場合と同じようなプレイングを引き出させること――これらであるだろう。
もし君が≪珊瑚マーフォーク≫【2/1バニラ】を≪蒼穹の魔道士≫【2/1、4マナ支払う毎に1枚ドローできる】に向かって攻撃させたとしても、これは決してハッタリだとは言えない。相手のクリーチャーの方が君のよりも断然良いし、もしこの交換が実現すれば十中八九君は喜ぶだろうからだ。
だがもし君が≪踏み荒らし≫【自軍全体に3/3修正とトランプル付与】や≪寄せ餌≫【ブロック強制の囮役オーラ】を抱えていて、後で大打撃を与えるつもりだとしよう。少なくともそのゲームにおいては事実上、君の≪マーフォーク≫は相手の≪魔道士≫よりも価値が高くなる可能性がある。
私はと言うと、私もこういった攻撃はほとんど毎回していると言える。もっとも、彼女のデッキに山盛りの≪グレイブディガー≫【戦場に出たとき墓地からクリーチャー1体を手札に戻せる】が入っている、という事実が割れているなら話は別だが。肝腎なのは、大きな物事を画策している最中であっても、それを対戦相手に決して勘付かせてはいけない、ということだ。
もし私が赤緑デッキを使っていて、相手に召喚されたばかりの≪骨砕きの巨人≫【4/4バニラ】がいる場合、私は手札に≪ショック≫があるなら往々にして≪熊≫を攻撃に出す。私はやはり、対戦相手には≪熊≫の2点ダメージを受けるのを選んでいただきたい――だが同時に、もしブロックしてきたなら、その時は≪熊≫と≪ショック≫の2枚を≪巨人≫と交換しようと申し分なく考えている。
以上の想定は非常に単純なものだが、君の全体的なゲームプランを覆い隠しながら、更なる短期的な均衡を見出す一助になるはずだ。
そうなると君は本当の準ブラフを構えられる。君が追加の価値を得ることができるのは、対戦相手の気に掛けるカードが君の示唆【representing】するものである、という状況においてのみ言えることだ。
君は緑黒デッキを使っていて、場には≪熊≫、手札には≪破滅の刃≫【対非黒のクリーチャー破壊】があるとしよう。対戦相手にはタップアウトした土地と召喚されたばかりの≪流浪のグリフィン≫【飛行、先制攻撃、2/4】が並んでいる。君のデッキはタフネス2のクリーチャーで一杯だから、君は決してその≪グリフィン≫を生かしておくことはできない。君は対戦相手がブロックしてきた場合には≪破滅の刃≫を使わなくてはいけないと分かっていながら、敢えて戦闘前に≪破滅の刃≫を唱えずに≪熊≫で攻撃するのを選ぶことができる。もちろんブロックされれば、戦闘前に≪破滅の刃≫を唱えれば本来自動的に与えただろう2点のダメージを、ドブに捨てることになるのだが。
もし対戦相手がブロックしないことを選べば、君は2点のダメージを与えることができる――そしてそれは、君が直観的にプレイングを組み立てた時と、つまり戦闘前に≪破滅の刃≫を使った場合と、同じダメージだ。そして戦闘後、君は≪破滅の刃≫をやはり使うべきだろう。
では、どうして君はこのような選択をし得るのだろうか?
理由はこうだ。もし対戦相手がブロックせず、君が戦闘後に≪破滅の刃≫を使った場合には、残りのゲームの間、君が≪剛力化≫を持っていると対戦相手は考えるだろうからだ。そうは言っても、対戦相手がブロックしてくるのを望んでいるわけでもないのに、ダメージを通す機会を自ら手放すような危険性を冒す、その理由は何だろうか?
なぜなら、君は意図的に対戦相手を惑わせようとしているからだ。これが理由だ。
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