初投稿です。
 よろしくお願いします。
 色の哲学についての記事を翻訳していきます。
 公式や草の根で既に訳出されているものもありますが、原文が発表されてから随分と年月が経っていることもあり、おそらく翻訳家諸兄、ここに新たに拙い訳を呈するのをもう了承してくださるだろう、と期待し訳出していきます。

≪抄訳:メカニクス、フレーバー、カラーパイ――MTG Salvation Wikiより≫
【本稿は次の記事の訳出である。
http://mtgsalvation.gamepedia.com/Mechanic
http://mtgsalvation.gamepedia.com/Flavor
http://mtgsalvation.gamepedia.com/Color_Pieの中の「3:白」の直前の「概要」「1:表象と意味」「2:個人主義とカラーパイ」】

●メカニクス【mechanics:一般的な英単語としては設計工を指すが、MTGの記事では公式で訳されるところのメカニズムを指す。草の根翻訳もメカニズム、メカニック、機能、メカニクスと判断が分かれるようである。このブログでは、mechanicsは有機的な仕掛けや機械主義や機械論を連想するmechanismとは明確に区別された概念なので、メカニズムと訳出することは避けた。機能という訳語は意味的に適正であると見えるが、「ここで言うmechanicsはフレーバーと双璧を成すものであり、MTGのデザインに固有の概念である」という特殊性を重要視し、機能という日常的に馴染みのある単語は避けることにした。英文では単数形a mechanicと複数形mechanicsの区別がなされているが、文脈で特に単一性や個別性が強調されていない限り、両方ともメカニクスと訳出することとした。もしこの区別を訳出するならば、メカニックとメカニクスとするのが良いと訳者は考える。】
 メカニクスは、複数のカード同士で作用しうるカードの能力である。メカニクスという単語は総合ルールには存在せず、デザイン上の概念として存在するだけである。
 メカニクスは以下のように分類できる。
 キーワード能力【keyword ability】――ルールテキストに書かれた語句の中で、能力を簡潔に表わすもの。常磐木能力【飛行、速攻、先制攻撃、トランプル、警戒、到達、など】を除いて、注釈文が添えられる。【他には装備、続唱、ストームなど。】
 キーワード処理【keyword action】――ルールの上で特別な意味を持つ動詞。その行為内容が要約された注釈文が添えられることもある。【破壊する、打ち消す、唱える、捨てる、生け贄に捧げる、公開する、占術を行なう、変身させる、増殖を行なう、など。】
 能力語【ability word】――共通の機能を持つカードを見分けるための語句で、ルール上は意味を持たない。【すなわちテキストから能力語を削除しても、ゲームの進行に必要なルール文章が成立する。スレッショルド、刻印、金属術、上陸、など。】
 明確に分類されていないメカニクス――廃語となったキーワード【生息条件、実存、埋葬、など】、銀枠のキーワード【超速攻、ゴチ、など】、キーワードでないメカニクス【リスティック、ハイフライング、スーパートランプル、休眠エンチャント、明滅、など】、メカニクスを口頭で表わす俗語【バウンス、ピッチスペル、キャントリップ、ルーター、など】、総合ルールで明確に分類されていないメカニクス【例えば「性質」、英語版ではattributesという語句そのものは、総合ルールでは明示されていない】。

●フレーバー
 フレーバーはマジックのゲームに関して、ある種の印象、あるいは一つの世界を創造したり物語を添えたりしようとする意思、それらを喚起させるための概念である。これを通じてゲームや各々のカードおよび商品に独特で個性的な性質が付与されている。フレーバーが現象するのは、イラスト、フレーバーテキスト、カードの表側、その他視覚的な情報といったカードの機能に関わらない部分においてであるが、市場、ウェブでの扱われ方、書籍などゲーム外での情報においてもまた現象する。

●カラーパイ:概要
「カラーパイ」および「カラーホイール」はマジックにおける色とそのメカニクスの表象【representation:本質や正体が見た目に化けて出たもの】であり、ウィザーズ社がMTGのゲーム内でメカニクスを分類する手段である。加えて、各色の背後にある哲学に区別を設けるものでもある。カラーパイは簡略な手段と言える。各色の営みに馴染みの薄いプレイヤーにとって、色の哲学や長所と短所の外層を把握する際に役立つものになるだろう。しかしながら各色の心髄は、ゲームの中だけでなく、デザイナーであるマーク・ローズウォーターが読者に宛てた記事の中にも展開されている。同時にマジックの小説が、以下のように認識されていることも考慮すべき重大な側面だ。それは、小説が読者やプレイヤーに、特定の色やその組み合わせを的確に人格に表現しているような登場人物へと熱烈な視線や見識を向けるようにさせてきた、という認識だ。

●カラーパイ:表象と意味
 カラーパイは各色の象徴を円形に並べた図形として描かれる。例を挙げるとマジックの各カードの裏面は、色のジェムが輪を描くように並んでいるという形で、カラーホイールという表象を大々的に示している。色の順序は常に同じで、時計回りに白、青、黒、赤、緑だ。このカラーホイールの並びそのものは、色の哲学の具体的な中身に関しては何も教えないが、これによって各色が他の色とどのように影響し合うかを容易に覚えることができる。この輪の並び方において、互いに隣り合った色は友好関係と呼ばれ、互いに接していない色は対抗関係と呼ばれる。例えば白は、緑と青とは友好関係にあり、黒と赤とは対抗関係にある。
 個々のブロックやセットは対抗色の互いに作用し合う関係を詳らかにしてきたが、各色は友好色と提携し対抗色と敵対することが圧倒的に多いと言える。とりわけ友好関係の二色が共通の対抗色に対峙する場合に顕著である。ブロックには最低一つの色対策カードのサイクルが収録されるのが通例となっている。各色は、対抗する二色へ同時に対策できるカード、あるいは対抗色やその基本土地に対して劇的な効果をもたらすカード、これらのいずれかを有しているだろう。例えばコールドスナップには、≪発光 / Luminesce≫【白のインスタント。ターン中の黒と赤のダメージを軽減】、≪瞬間凍結 / Flashfreeze≫【青のインスタント。赤か緑のクリーチャー呪文を打ち消す】、≪死の印 / Deathmark≫【黒のソーサリー。白か緑のクリーチャー1体を破壊する】、≪氷結地獄 / Cryoclasm≫【赤のソーサリー。平地か島を1つ破壊し、コントローラーにダメージ】、≪カープルーザンの徘徊者 / Karplusan Strider≫【緑のクリーチャー。青や黒の呪文の対象にならない】というサイクルが収録され、これらは第十版にも再録された。対照的に、非常に稀ではあるが、例えば≪グリッサの急使 / Glissa’s Courier≫【緑のクリーチャー。山渡りを持つ】のような、友好色に害をもたらすようなカードが作られることもある。

●カラーパイ:個人主義とカラーパイ
 いかなる個々人も、たとえ彼らが他の同朋から切り離されたとしても、入念に観察されることでその色やギルドと同類の特徴が見出されるはずだ。もっともそれは、より小さくより現実的な規模ではあるだろうが。この【MTG Salvation Wikiのカラーパイの】記事で最初に取り上げられる色を例に取って見ると、集団としての白は、平和、調和、そして世界の団結のために邁進している。だが秩序正しい個人や市民としての白にとっては、それらの最終的な目的は彼らの日々の生活にとってあまりにも大き過ぎる話である。彼らはこういった解釈を容易に受け容れる【身の丈を弁えている、とも言える】。この集団と個人の差異を今一度はっきりさせるならば、白の集団は秩序や倫理に強い確信を抱くだろうし、規則や条例や法律を定めることでその信念を推し進めようとするはずである。しかし白の個人はもっと小さな規模で事を為すだろう、家族との夕食の席でテレビを点けないことが望ましいと考えるように、夕食のエチケットや上品なマナーに価値を置くといった感じに、である。白の集団は手に負えないような煩わしい個人を追放しうるが、白の個人は独力でそのようなことを成し遂げるに十分な力を兼ね備えてはいないのである。≪正義の凝視 / Gaze of Justice≫【クリーチャー1体を追放する白のソーサリー除去。追加コストとして白クリーチャー3体のタップが要求される】はこれを完璧に表象するカードだと言えよう。
 もっとも、登場人物の個性の決定は、ある種の指針と規則に基づいて行なわれている。
 第一の指針は、弾力的で融通の利く五つの特徴だ。とはいえ、ある一つの色に際立って現れつつも、それらの特徴自体は全ての色の人物に見出されるのだが。それら五つの特徴は次のようなものだ。白の組織体、青の知性、黒の利己心、赤の感情、緑の本能、これらである。組織に組み込まれた人物は自動的に白である、というわけではない。だが、組織に価値を見出すような人物は白かもしれない、ということだ。参照していくと、黒赤では≪虚空 / Void≫【黒赤のソーサリー。選んだ数字一つに等しい点数で見たパーマネントを破壊し、さらに手札破壊まで行なう】のような算術的に設計された除去や、効率の良いマナコストの単体除去である≪終止 / Terminate≫【黒赤のインスタント。対象の色の制限を問わない単体クリーチャー除去】といった事例で、組織の兆候や色合いが示されている。緑白の利己心【self-concern】は≪勇士の再会 / Heroes’ Reunion≫【緑白のインスタント。7点ライフ回復】のようなライフ獲得という形で現れるが、このことで緑白が自己中心的【selfish】だということにはならない。どちらかと言えば、ある人物が自己中心的であるのは、その人が自分の権威や力を研ぎ澄ましているからだ。本能は非人工的な形態を取るあらゆる生命にとって不可避なものであり、吸血鬼でさえも彼らの天性の渇きを満たすために獲物を調達しなければならない。魔術師は空腹では学ぶに学べないし、また異性に惹きつけられさえもする。これらは自然に備わる意思だが、このことで吸血鬼や魔術師が緑とされるわけではない。これらそれぞれの特徴に価値を見出すかどうかが色の個性を定義するのであって、特徴が色に見出されるかどうかが定義するのではない。換言すれば、ある特徴がある色に表出していることを重大事として扱うべきではないのだ。
 第二の規則は、影響力【influences:影響を及ぼす人や物事】を考慮しなければならない、というものだ。もしある人物が黒の人物とともに長い時間を過ごせば、その人はおそらく、自己中心的だったり黒に率直だったりと見なされるような、そういった振る舞いをするようになるだろう。だがこのことはその人を黒に分類する根拠にはならない、というのも、その人は周囲への同調を強いる圧力を感じて内心では苛まれているかもしれないし、道徳的な視野を見失ってしまったりあるいは見失いつつあったりするかもしれないし、自分がしていることを完全には自覚していないのかもしれないし、はたまた今までの価値観を再考して色を替えるか否かを決断する過程にあるのかもしれない、そういった不確定の事情があるからだ。また、影響力は血統、人種、職業からももたらされる。ここにアゾリウス評議会のゴブリンという登場人物を例に挙げると、このゴブリンはおそらく青白であるだろうが、その行為、言葉、反応、思考の表層部分に赤の影響が浮かび上がってくる可能性も高いと思われる。概して、敵対する影響力が現れる際、その影響力が供するのは他の色の特徴を薄めることだけである。例えば黒赤の人物が白の影響力に接した場合、その人物は幾分か緩和された黒赤の個性を持つ者になるだろう、ということだ。

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