今回訳出した記事には公式訳『リミテッドにおける2色の組み合わせ』が存在します。
http://mtg-jp.com/reading/translated/0014981/#

 なんとなくカラーパイに関係してそうだと思って原文発表直後に訳出を始めたのですが、訳出終了の前日に公式訳が発表されてしまったので、USBメモリの中に幽閉していました。やはり最新記事の訳出は迅速に完遂しなければいけません。

≪リミテッドにおける二色の組≫
原題:Color Pair Building Blocks
Marshall Sutcliffe
2015年5月20日
http://magic.wizards.com/en/articles/archive/limited-information/color-pair-building-blocks-2015-05-20

 ここDailyMTG.comではモダン週間を迎えている。だが、我々は≪出産の殻 / Birthing Pod≫の禁止について討論するわけでもなければ、≪集合した中隊 / Collected Company≫が現環境へ与える影響について討論するわけでもない――それはおそらく君たちが期待するところであるはずだ。そう、私はこの記事を確然的で信頼置けるリミテッドプレイヤーへ捧げるつもりだ。我々が愛して止まないリミテッド、それと同等の特別な思い入れがこの記事には込められている。デッキ構築、マナ基盤、パックの並び【variance:平方偏差】、計画練り、開封作業、そして時計を用心深く見ながらゲームを全うすること――これらに君たちも夢中になる必要がある。
 40枚デッキへの志向を取るがために、我々はモダンについての議論を避けてしまうかもしれないが、実際にはそう的外れな話題に終始するわけではない。何と言っても各セットをそれぞれ特別にしている要因のひとつは、我々が新たな素晴らしいカードでドラフトを行なえるようになる、という点にある。それは我々の大多数にとって、初めての機会であろう。今回私が取り上げるのは、十通りの色の組がリミテッドで普段どのような様相を呈するか、ということについてだ。そしてモダン週間に敬意を示すため、モダンマスターズ2015【MM2】で私の目を惹いた色の組を特に強調していくつもりだ。

●ありきたりな類型論
 新たなフォーマットに判定を付けるに際して、有用なのは類型論の立場から考えることだ。類型とは、ある種の物事の典型的な標本だ。今回の事例では、二色の組み合わせがリミテッドのマジックでいかに協働するか、という色見本だと言える。
 ほとんどのセットは、リミテッドを二色デッキで遊べるようにデザインされている。この傾向から外れるような具体例としては、タルキール覇王譚が挙げられる。だが大抵の場合、新セットでのリミテッドに期待されるのは、【各カードの】潜在性が【一つのデッキに】行き渡るのを可能とするマナ調整基盤であり、それを搭載した二色デッキであるはずだ。
 もしそうであるならば、リミテッドで何度も見られる十通りの二色の組み合わせがあることになる。これらそれぞれを歴史的に把握することは、新たなセットに備える一助となりうる。私がここで強調しておきたいのは、これから述べることが一般的なものである、という点だ。ほとんどのセットはこれら二色の組の例外事項と、それら例外の機能のあり方とを示している。新たなメカニクスとセットの構造もまた、色の組み合わせを雑然とさせている。予想だにしなかった方法で色の組が表現されるのを、我々は時折目の当たりにする。
 以下の試みは、これら色の組がセット毎にいかに動作してきたか、その見通しとなる青写真を提示することだ。先述したように、MM2で私の目に留まったいくつかの色の組について、いくらかの予報も含んだ記述になっている。

●白青
 リミテッド仕様の白青と聞くと、ほとんどの人が「飛行」デッキを連想するだろう。白と青はほとんどの飛行クリーチャーを有しており、それを中軸に使って制空権を支配する、というデッキだ。また、地上を守る高いタフネスのクリーチャーを、展開速度を操る青の呪文や受動的な白の除去呪文が補助することで、対戦相手を減速させる、そしてこれらは航空部隊が任務を終えるのに十分な時間稼ぎとなるのだ。
 この類型が優れているとき、【むしろ】「非常に優れている」傾向にある。つまり飛行は、リミテッドでは単純に非常に強力だということだ。
 MM2での白青は、以前の記事で言及した白黒のスピリットデッキと同等のものを組むことができるが、【それよりも重要なことに】強力なアーティファクトという準主題を持っている。例えば白の≪宮廷のホムンクルス / Court Homunculus≫、≪急送 / Dispatch≫、≪マイア鍛冶 / Myrsmith≫、青の≪フェアリーの機械論者 / Faerie Mechanist≫、≪クムラックス / Qumulox≫、≪銀白のスフィンクス / Argent Sphinx≫だ。
 非常に多くの優秀なアーティファクトがMM2には収録されており、それらはこの類型を後押しすることだろう。

●青赤
 率直なところ、青赤は素晴らしい組を作るような傾向にはない。この二色の組から我々が見出しうる一つの事実は、除去の量と質がこの系統のデッキの成しうることの多くを規定している、ということだ。青は展開速度を操る呪文や緩慢な除去呪文、詳言すると、実際にクリーチャーを殺すわけではないが除去として機能しうる呪文、を有しているし、また赤は火力呪文を有している。火力呪文は伝統的に、小型や中堅のクリーチャーを始末する有効な手立てだが、巨大で爆弾のような脅威に対しては憂き目を見させられる。
 この類型が立ち現れるのは、普通ならば、何らかのメカニクスがそうすることを可能としているからだ。このデッキは速度を基盤にしていて、【ゲームの展開が】素早い。これが必要としているのは速攻クリーチャー、飛行持ち、そして軽い介入呪文であり、したがって滅多に防御的に立ち回ることはなく、攻撃の極致に向かいがちだ。

●緑青
 緑青は私にとってともすれば、マジックの中で贔屓の二色の組み合わせかもしれない。非常に魅力的な大型クリーチャーが先陣を切って繰り出され、強力な速度を伴う立ち回りが展開される。束のようにカードを、それも歴代で最上の部類に入るようなものを、手札に引き入れることもあるだろう。【ところで】私は先ほど青赤で除去呪文について触れたが、そこがまさにこのデッキのアキレス腱だ。根本的な除去呪文というものを、この色の組み合わせは全くと言っていいほど有していないのだ。最近では緑は「対飛行持ち」のカード群という、近似的な除去として優秀な役割を果たすものを宛がわれた。青の送還呪文や緩慢な除去呪文も、依然として健在だ。
 MM2の中で非常に興味深いコンボの一つをここに挙げよう。≪水辺の蜘蛛 / Aquastrand Spider≫と≪テゼレットの計略 / Tezzeret’s Gambit≫だ。移植と増殖とが作り出す、非常に見栄えの良い相互作用だ。【ちなみに移植クリーチャーは青や緑に多く見られるが、増殖は≪着実な進歩 / Steady Progress≫、≪かき鳴らし鳥 / Thrummingbird≫など青に少数限られている。】
 基本的に、移植持ちクリーチャーは+1/+1カウンターによって出来ていて、増殖持ちカードはそれら全てのカウンターを一度に増やすことができる。もし移植持ちクリーチャーの一団を戦場に並べることができ、その後に増殖カードを回し始めることができれば、君のクリーチャーは早々に管理を逃れて成長していくことだろう。

●青黒
 あぁ、そうだとも、これも私の贔屓の組み合わせだ。青黒は傾向として、最も価値あるコンボを作り上げる組み合わせだ。ほとんどの構築環境においてこの組はコントロールデッキであり、堅実で密度の濃い黒の除去と青のドローがカードアドバンテージをもたらす、圧倒的実力を誇る由緒正しいデッキだ。一たび対戦相手の脅威が塵となって収まれば、優秀な巨大クリーチャー、あるいは少数の青の飛行持ちかもしれないが、それらが止めを刺して任務を終える、ということだ。
 しかしながらこの手のデッキは遅くなりがちで、優秀な攻撃的デッキに見られる素早い軽量なドローカードに対面すると、後手に回って轢き殺されてしまいがちだ。私が思うに、諸君が自分のデッキを構築する際には、このような対戦相性の良し悪しを念頭に置き、その他の点についても自分自身の経験から批判を引き出すべきだろう。もし君のゲームが脅威に対する除去やカードを引くことで出来ているなら、それは【青黒魔法使いの隠れ】家を見つけたと言えるだろう。もしそうなら、ようこそ。

●黒赤
 ここに来て我々は、真に攻撃的な色の組み合わせに初めて相対することになった。黒は普段から軽量な脅威と最高水準の除去という素敵な詰め合わせで出来ているし、一方で赤は、より軽量な脅威と火力呪文を、詳言すると、序盤は対戦相手のクリーチャーを焼くのに有用でありつつ、終盤は対戦相手本人を焼いてゲームを終わらせる一助となる、そのような火力呪文を有している。もし諸君のようなマジック愛好家の中で、ゲーム開始時に20点ある対戦相手のライフを可能な限り素早く削り取るということ、このことに駆り立てられる者がいるとすれば、この黒赤デッキがその人には誂え向きだ。
 MM2について言えば、我々は狂喜【血への渇望】メカニクスの復活を見出せる。ビートダウンの使い手にとっては朗報だ。狂喜は対戦相手を敗北に追い込むことだけでなく、可能な限り攻撃的なデッキを使うよう自分自身を仕向けることにも、非常な影響力があるからだ。狂喜とはビートダウンデッキのことであり、それは時代が変わっても変わらない事情だ。
 通常ならば、≪ゴブリンの投火師 / Goblin Fireslinger≫のようなカードが誰かのカード一覧表の上位に食い込むことは、まず起こらないはずだが、≪血のオーガ / Blood Ogre≫というマナカーブを規格外に超えた狂喜持ちが存在する今回のような環境では、評価は釣り上がることだろう。

●黒緑
 黒緑はより「グリンドな【grindy:「grind」で「珈琲豆などを細かく挽き砕く」】」色の組の一つだ。我々が「そのデッキはグリンドだ」と言うとき、我々が表現しようとするのは、そのデッキが長期に渡って小さなアドバンテージを拾い集める傾向にある、ということだ。【訳注:例えば検索では「Grindy Grixis Control」が引っ掛かる。】これらのデッキは通常、攻撃的なデッキの極致とコントロールデッキの極致、その中間にあると言える。そして幅広いマナ域から重厚なクリーチャーと呪文を採用する傾向もある。
 リミテッドのほとんどのデッキが事実上、本質的に、ミッドレンジであると考えるならば、黒緑が最もミッドレンジというデッキ類型に近いと言える。緑のクリーチャーと黒の除去を有し、盤面を妨害によって支配し、最終的には大型の緑のクリーチャーでダメージを押し込む、というゲームの流れだ。このデッキは適切なドローに恵まれれば、遅めのデッキに対して率先的に戦況を支配するよう立ち回ることも可能だ。

●白黒
 白黒はおそらく、類型に当て嵌めるのが最も困難な色の組だろう。一般的に言って、この組は利用可能な中で最上級である除去呪文に手を出すことができるが、クリーチャーが互いに網のように強く結びつくことは滅多にない。確かに白は、小型クリーチャーの一団や幾ばくかのトークンを提供するし、また黒は、マナ域に応じてクリーチャーを提供する。しかし、この白黒という除去の濃い色の組にこそ採用したい大型の攻撃役が、実際にデッキに入るのは稀有なことなのだ。白黒デッキの除去が優秀であることは事実だと思われるが、そこで次に引き絞られる焦点は、このデッキに組み込まれるクリーチャーの質がいかほどのものか、ということになってくる。
 往々にしてそれに適うクリーチャーは、セット特有のメカニクスの方から訪れてくる。ただし、黒白という色の間で十分な相乗効果が見込める、という条件付きで。素晴らしいことにMM2ではこの条件が達成されている。すなわち≪蝋鬣の獏 / Waxmane Baku≫や≪希望の盗人 / Thief of Hope≫等、スピリットクリーチャーの存在だ。
 我々は数週前のこの連載記事で彼らスピリットを紹介したが、MM2の白黒デッキを使う最もな理由の一つとして、彼らは今週もここに立ち現れたわけだ。もしスピリットと秘儀呪文を確保し、それらを展開することができれば、それは強力な戦略に、すなわち素晴らしい終盤戦を不可避なものとして確約し、一方でそこまで持ち堪え生き長らえるという戦略にもなるだろう。

●緑白
 往々にしてこの組は、色の組み合わせの中で最も「公正な」ものだと見なされる。この組は全ての実戦に耐えうる【relevant:適切な。関与のある】マナ域に手ごろなクリーチャーを有していることが多く、またゲーム全体を通じての計画が率直であるため、初心者にも人気のある取り合わせだ。まずクリーチャーを展開し、それらをコンバット・トリックや少量の除去で支援し、クリーチャーで殴りきろうと試みる、という計画だ。白の除去カードの質と緑の戦闘カードの質が、この種の緑白デッキ全体の出来を左右しうる。
 この種のデッキを使うべきでない状況として挙げられるのは、例えば、他のデッキに含まれる相乗効果の方がより早くゲームを展開する、そういった事情が見られる場合だ。諸君は、対戦相手のであれ自分のであれ、多くのカードと相互作用を得ることはできない。そうであるからには、自分のパワー水準や【デッキの】一貫性によってそれを埋め合わせるべきだ。これはなかなか出来ない要求だが、時として直面しなければならないものでもある。

●赤白
 この組は、攻撃的な領域の最果てで重苦しく歪んでいるが、見栄えの良い捩れ方をしている。赤白のカードが自らに課したのは、二つないし三つの枠に注力を引き絞ることだ。優秀な除去呪文同様、最良の多くのクリーチャーがこのデッキには含まれるからだ。換言すると、赤白使いは盤面に手ごろな脅威を置くことから始め、それを駆け引きや除去で支援する。軽量の火力呪文、強力な白の除去、そしてダメージを通し続けるためのコンバット・トリックの束、赤白はこれらを有する。
 この組み合わせの本領は、トークン生成能力にある。両方ともトークン生成能力を持つ色であり、赤白使いは軍団を「横に拡げ」、パワーを全体強化する呪文で膨大なダメージを弾き出すことができる。
 MM2では、トークン生成という主題は鳴りを潜めているが、代わりにクリーチャー増強という主題は多く見られる。≪血まなこの練習生 / Bloodshot Trainee≫や≪炉火のホブゴブリン / Hearthfire Hobgoblin≫がそれだ。
 これらのようなクリーチャーを交えることで、どんな手段であれパワーを強化させるのはいかに強力であるかが分かっていただけると思う。装備品、オーラ、使い捨ての増強呪文、何であっても構わない。ものの数回パワーを上げるだけでも、それからゲームを終わらせるために必要な時間は短くなっているものだ。

●赤緑
 ほとんどの人は赤緑を見ると≪不屈の自然 / Rampant Growth≫を連想するが、それはある意味ではリミテッドでも同様だと言える。というのは、土地を伸ばすことが赤緑の基本戦略だ、とは私は考えていないからだ。【そうではなく、赤緑の本領は以下のような事情にあると考える。】赤緑デッキは大抵、デッキ内の多くが「恐ろしいクリーチャー【dinosaurs】」だというように仕上がる。ご存知、馬鹿でかくてうすのろなクリーチャーを戦場に並べて攻撃するだけ、という類の簡単なデッキだ。こういう言い方はいささか単調に聞こえるだろうが、驚くべきことにこの戦略は多くの環境で有効なのだ。
 誂え向きの例として、最初に話した白青デッキとの対戦が挙げられる。もし赤緑使いの君が大きな脅威を着地できた場合で、そしてそれが対戦相手の地上の防御役を薙ぎ倒したり、空中の攻撃役よりもダメージレースで優位に立てたりできるほど強力であるならば、対戦相手は、その眼前に迫った脅威への具体的で有効な回答を見つけなければならない、という多大な圧力を感じることになる。この事例について公正を期して論を進めるが、もし青白側が回答を持っている場合、普通なら赤緑側はそのまま負けだ。十分な相乗効果を持たせずに巨大クリーチャーを展開していくだけという戦略の短所は、ここにある。
 MM2での類型について言及することは、もはやない。敢えてもう一点だけ強調すれば、最も可愛い絵を宛がわれた最も可愛いクリーチャーは、初めて再版となった≪黙示録のハイドラ / Apocalypse Hydra≫だと思う。

●教訓
 いつものことながら、私の記事から何かしら、諸君がゲームを発展させる一助となるものを学び取っていただければ、それこそ私の本望だ。我々は情熱に近いほどまでにマジックに夢中になっていて、その要因は数多くあるだろうが、私にとってのそれはゲームが与えてくれる機会、すなわち絶え間なく改良していくための機会、これであると考えている。このゲームの到達しうる上限は非常に高く【現時点ではまだまだ発展の余地を残していて】、我々は自分のゲームを永遠に続けられる、そのように私は感じるのであって、私はそれを心地よく思っている。
 二色の組み合わせそれぞれが一般感覚としてどう動くかを知ることで、特定のセットがいかに失敗しているかを推量できるようになるが、しかし言い換えればこの知識は、色の組がそれぞれ普段から外れているか否かを識別するための基準線となりうる。私が高校生のときでバスケットボールをしていたとき、指導官は常日頃から生徒をこう注意したものだった。我々の偶像化するプロプレイヤーがやるような思い付きの【fancy】技を見せるよりも前に、まずはゲームのイロハを習得しなければならない、と。
 そう言った指導官は、全面的に正しい。私は基礎に注目するにつれ、思い付きの要素を容易に感じるようになった。マジックについても同様だ。もし色の組が普段ならどのように動くかを知っていれば、それとは別のように動く特殊な条件はどのようなものかということをも知ることになるはずだ。そしてこのことは、自分が最先端にいるのか、あるいは残余の群集と一緒に後れを取っているのか、その違いについても示唆していると思う。

 私は前者の道でありたいと思う。

 それでは、また来週会うときまで!

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